はじまりは、祖母の介護でした。
おしゃれが好きでアクティブだった祖母は、
私が小学生の時にパーキンソン病を発症しました。
進行する症状にあわせて、
我が家は住宅を改修し、様々な福祉用具を用意し、
食器などの日用品を介護用に買い替えていきました。
そうして家を介護に対応させていくごとに、
一つの違和感を感じるようになりました。
「ずっと安全で便利になったはずなのに、快適じゃない」
介護のカタログに並ぶ商品は、保険を使ったサービスですから、
選択肢や体験性よりも、機能と価格の妥当性、そして平等なサービスが不足なく提供されることが優先されます。
しかし、実は保険を使わない洋服や食器といった日用品でさえ、
介護が必要な方向けの商品となると、選択肢が一気に狭まります。
こうして家を介護仕様にすればするほど、
家の中はプラスチックで溢れ、
気づけば長年祖母が暮らした我が家は、
家でも病院でも施設でもない、見た事がない 場所になっていました。
そして「介護が必要な感じが目立つから…」と言って、
祖母は家に閉じこもるようになりました。
病気や障がいを抱えても、その人であることには変わりはないのに、
なぜ選べないのだろう?
毎日使う、もしかしたら人生最期に使うものを選ぶのに、
なぜワクワクすらしないのだろう。
なぜ人生最後に悲しい思いを抱えて、
自分の存在すら恥ずかしく思うのだろう。
幼い頃感じた疑問を胸に、晩年を豊かにする仕事がしたいと思って生きてきました。
日本は介護保険制度のお陰で、
多くの人にモノとサービスが行き届く社会が出来ました。
そして量と制度が整備された今、
日本の介護は新しい時代を迎えようとしています。
その一つが、プロダクトの選択肢と体験性だと考えます。
病気やケガなどでサポートが必要な時にこそ、
そして人生最後に使うものこそ、選択肢とワクワクするような体験性を。
そんな社会を目指して、誰もが使いやすい日用品を集めた場を作りました。
大切にしたのは、使いやすい機能性と、使う方が主人公であることです。
商品は地道に全国から集めてきたもので、数はとても十分とは言えません。
今ある商品では、応えられないご要望もあると思います。
そんな時はそっと、コンタクトからお声をお聞かせください。
少しずつですが、商品を増やして参ります。
人生最後まで自分らしく、誇らしく。
ねんりんは、ものづくりとケアの視点をつなぐプラットフォームです。